■日本サッカー界・個人にとって歴史的な一戦
ACミランとの一戦は、通常のW杯初出場(98年vsアルゼンチン戦)以上に、日本サッカーにとって歴史的、重要な一戦だったと確信しています。
何故なら、今のフットボールシーンはもはや「代表」ではなく「クラブ」を中心に動いており、最先端のフットボールも「クラブ」(というかUEFA CL)にて表現されているのが実情だからです。
そういう環境の中で、初めて公式大会、しかも準決勝と言うステージで日本のクラブ・浦和レッズが欧州王者・ACミランと真剣勝負が出来ると言う事は、トップシーンのとJリーグとの差を実感する事ができる超貴重な機会であり、「Jリーグの底上げによって代表チームの強化を図る」という、93年来の強化方針の是非を問う非常に重い意味を持つ試合だったのではないでしょうか?
そして・・個人的な事を言えば、ACミランは「組織」「戦術」面からのフットボールの素晴らしさを教えてくれたチームであり、Redsを除けば最も好きなクラブです。イタリアにミランの試合が観たいが為に1人で出かけたくらいですから・・。
そのミランと愛するRedsが真剣勝負ができる・・。これは、日本代表がW杯の決勝に進出する事より、日本代表が欧州列強と公式試合で対戦するよりも、私にとってはバリューがあるカードであり、最高の試合だったと断言できます。
■現状出せる最高のパフォーマンスを発揮してくれたReds
さて、試合についてですが、ACミランが1枚どころか5枚位上を行っていたと言わざるを得ません。
特に、攻守に渡る組織戦術(相手守備陣を3、4人が連動した上で、複数のパスを繋いでシュートまで持っていくことができるパターン攻撃/ガットゥーソ・アンブロジーニを中心としたボールホルダーへのプレス/ボールキープする事で相手守備の機会そのものを奪い去る)は、素晴らしいとしか言い様が無かったです。
それを、個々を見ても総じてRedsの選手より能力が高いミランの選手が実践しているのですから、強い筈です。
但し、Redsにしても黙っていた訳では有りませんでした。
啓太をして「今シーズン最高の出来」と言わしめたセパハン戦に引き続き、高い守備位置を保持した最終ラインをベースに、前線から中盤をコンパクトに纏めた布陣で、積極的なプレスを仕掛ける事でボール奪取もある程度できていたし、ペナルティエリア直前までカウンター攻撃を繰り出す事は十分に出来ていたと、ビデオを改めて見ててう次第です。
現地では、Goal裏爆心地で必死に応援していた為気付かなかったのですが・・。それでも、前半20分を過ぎた辺りから、ミランが醸し出す雰囲気が変わり、プレーが激しくなった事は十分感じ取れました。「こいつら、想像以上にやるぞ」と・・。
前半0-0のスコアは、Redsにとっては最高の展開だったと言っていいでしょう。「何か起これば勝てるかもしれない」「何かを起こす為に最高のサポートをしよう」そう思わせてくれる前半でした。
後半、遂にミランが勝つ為に攻勢に出てきましたが、「攻め」「守り」を流れの中で変えるだけでなく、今回の後半開始時の様に、流れに関係なく意図的に攻守のスイッチを切り替えられる所に、世界最高レベルのチームの凄さを見せ付けられた気がします。
RedsはJリーグの中では試合巧者(守りきる事が出来るという意味で)な方ですが、そういう技術では国内隋一と言われる鹿島でもミランの様な切替方はまだまだ出来ていないのが実情ではないでしょうか?
Redsが目指すべき次のステップ、最大の課題こそミランが見せてくれた「何者にも左右されずに意図的に攻守のスイッチを切り替える」姿勢だと痛感しました。
それでも「ACL」と過密日程で身につけたRedsの「忍耐力」という、最大の武器で無失点に凌ぐ事に成功しました。この「忍耐力」こそACLを戦う事で身につけたReds最大の長所であり、日本サッカーにとっても「組織力」に並んで今後必要になるスキルである気がします。
話は逸れますが、仮にRedsがACLに参加しない、または07’Jリーグチャンピオン=開催国としてCWCに参加していたとすると、ミラン戦までたどり着けなかった気がします。ACLという国際舞台、ありえない競技環境とプレーのストレスにさらされ、それに耐えた経験と「忍耐力」があったからこそ、ここまで来れたのではないでしょうか?
ACLを闘えて本当に良かった・・。
しかし耐えに耐え、中盤でのカットからワシントンに繋ぎ、ミドルシュートを放ち、試合に勝つべく歩を進めた刹那、後半22分、ミランが閃光の如く突如スピードアップ(というより、個の能力を最大限に開放した!?)し、Redsの守備網を決壊させてしまいました。
今シーズンのバロンドール・カカー―。
凄まじいドリブル突破でした。
中盤左サイドでフリーで動きながらボールを受けると、そのままスピードアップしてReds守備陣をヒラリヒラリ・・。Reds守備陣もただ突っ立ている訳ではなにのに、その間隙をアッサリ抜ってしまう、そのドリブル、国内隋一のスピードを誇る坪井を振り切ってしまう脚力、ペナルティエリアに最高速で侵入しながら、フリーで走りこんでくるセードルフをしっかり捕らえる視野の広さ、GKとDFラインの間という、もっとも嫌らしいスペースにきっちりボールを送れるパスの精度―。
全てが、規格外でした。「パサー」「ドリブラー」「クロッサー」・・。国内では1つに括られがちな能力を全て兼備する―これが世界なのか・・!そう感じざるを得ない衝撃プレーでした。正直、我らのロビーや名古屋で活躍したストイコビッチすら、「古典的ゲームメーカー」に映ってしまう程に。
こういう選手が現れる、または日本のクラブが獲得するのは正直、すぐには難しい、というか神のみぞ知る領域でしょう。
しかし、一連のプレーを「パーツ毎」に切り分けれてみると、実践できるプレーもあります。
例えば、クロスはペナルティエリア外からではなく、ペナルティエリアまでドリブルで侵入してから上げる―可能なら、ゴール前の状況を判断して杯ハイクロスとグラウンダーをを使い分ける―。
これは、相馬だけではなく、日本人サイドバックの課題でもあり、意識的に取組んでいけるプレーだと思います。
その後、マルディーニ、ブロッキを投入して試合を落ちつかせ、しっかりと勝利を収めたミラン―。
結局、力の差をまざまざと見せ付けられた結果でした。プラン通り1-0の試合を遂行していました。凄い・・。
けれども、「歯が立たなかった」「ミランは手を抜いていた」とは全く思いません。
圧倒的な実力差が有るならば、もっと点差が付いていた筈だし、プラン通りにプレーするには、しっかりとしたコンセンサスと準備が必要だからです。
ミランは「真剣」に闘っていたと思います。そこに油断や傲慢さは一切無かった。一瞬であるにせよ(カカーの得点)、本気を出した事もまた事実です。
Redsは現状のメンバーで今可能な最大限のプレーをし、今シーズンベストの内容を披露してくれました。そして、前述のように「真剣」に勝負を挑んでくれたミラン。
Redsは敗れはしたけれども、本当にGood gameでした。選手もサポーターも観客も負けても納得できる・・」そんな清清しい、フットボールの素晴らしさが詰まった一戦でした。
■来シーズンに向けて―
Redsやサポーター仲間は、3位決定戦が残っていますが、僕の今シーズンはこの一戦で終了です。もやもやした感情が鬱積する中、最後の最後に納得のいく試合を選手が見せてくれたし。個人的には納得のいくサポーティングができて、いい締めくくりが出来たと思っています。
Redsの選手、スタッフ、サポーター仲間、他のJクラブ、ACLで闘ったクラブ、そしてACミラン―本当に有難うございました。
今シーズンは、サポーティングをしていて色んな事を考えさせられる事が多く、悩みが多い1年でした。
チームに関して言えば、結果を残したものの、CWCを除いてよい内容のサッカーを殆ど見ることが出来ませんでした。シーズン序盤こそ、4バックやポゼッション重視の戦術導入の姿勢が伺えたものの、8・15のガンバ戦を境に昨年と同様の「個人能力に準拠した負けないフットボール」に終始し、結局Jリーグ連覇を逃す事になりました。
終ぞ、オジェックに求めた「ワンランク上」の姿、目指すべき方向性が全く解らない1年になってしまいました。
僕たちは別にバルセロナやセビージャの様な「攻撃サッカー」を盲目的に信奉している訳では有りません。「攻撃重視」のチームは浮き沈みが激しい事は解っているし、守備力と鋭いカウンターがReds伝統の武器である事も重々承知しています。
そうではなく、今回ミランという最高のサンプルと試合が出来ましたが―守備力と鋭いカウンターという土台に攻守に渡る組織戦術を植えつけて欲しいと願っているだけではないでしょうか?
確かにここ3年勝ち続けてきましたが、誰もが心の中で「このままではいつか陥落する」と気付いていたと思います。だから、ゴール裏の雰囲気が年々おかしくなってきたし(コアな危機感を感じる人と勝ち馬に便乗する人間が同居してしまう)、最終戦で優勝を逃しても涙の少ない・悔しさを表に出さない雰囲気が生まれてしまったと考えています。
その意味で、Reds関係者の誰もが望み、それが出来る人材として現場を託されたオジェック監督は、ACL優勝という結果こそ残したものの、チームの方向性を示せなかった上に、度重なる造反劇を招いた事を考えても、落第と言わざるを得ないと僕は思っています。
来シーズンは、選手とのコミュニケーションの改善と、戦力のフル活用、CWCで見せたフットボールをさらに発展させた組織力のあるチームビジョンを具現化しなければならないと考えます。
浦和レッズに関わった全ての関係者の皆さん、本当に一年間お疲れ様でした!